説 教 「信仰に報いる主」指方周平牧師

聖 書  ダニエル書6:10~23

 

 1944年4月、中国河北省深県にあった日本軍駐屯地で八路軍兵士5人の処刑が行われました。杭に縛り付けられた捕虜を前に49名の新兵が並ばされ、上官は「度胸試しの訓練」と銃剣で殺すことを命じ、新兵たちは震えながら次々捕虜を突き刺しました。4人が絶命し5人目になったところで、かねてからキリスト者ということで目を付けられていた渡部良三という新兵の番になりましたが、彼の中では「汝、殺すなかれ」という声が響き、渡部さんは黙ったまま立ち尽くして殺すことを拒否したのでした。その日から上官による陰険なリンチの日々が始まったのでしたが、学徒出陣に際し父親から「信仰も思想も良心も、行動を伴わなければ先細りになってしまう。沈黙が信仰を守ってくれると考えることはおごりだぞ」と諭された渡部さんは、命がけで殺すことを拒否し続けました。

 

ダニエルは、バビロンに捕囚として連れてこられたユダヤ人でしたが、その優秀さと忠実な働きぶりを見出されていった彼は、いつしかバビロンの大臣の地位にまで上り詰めました。そんなダニエルを妬み、失脚させようとした人たちは彼の信仰に目を付けて策略を編み出し「向こう30日間、王様を差し置いて他の人間や神に願い事をする者は、だれであれ獅子の洞窟に投げ込まれる」という禁令を出すよう王に進言し、祭り上げられ気を良くした王はその通りに禁令を出しました。この禁令を知っていたダニエルでしたが、彼は、いつもと同じように祈りと賛美を自分の神にささげたのでした。こうしてダニエルは禁令を破った理由で捕えられ、獰猛な獅子のいる洞窟に投げ込まれる絶体絶命の危機に陥ったのでした。

 

しかし獅子の洞窟に投げ込まれたダニエルは、主なる神によって守られていたので害を受けることなく救い出され、軍隊において殺すことを拒否し続けた渡部良三さんも、他の新兵に影響を及ぼすことを恐れられてか、公的処罰もないまま通信教育隊に転属させられリンチの日々を脱出したといいます。これらの出来事は、主なる神に従う姿勢を守り抜いた報いとして信仰者の命が救い出されたかのようですが、これらは他に手立てがない困難な状況の中で、どこに立つか、何に信頼するかという信仰が命がけで試された出来事です。数多の殉教者がいるように、仮にダニエルや渡部さんが、もし、あのまま死んで終わっていたとしても、彼らの希望はそれで途切れなかったと信じます。命がけで信仰を貫き通した彼らが本当に守ろうとしたものは朽ちる肉体の命ではなく、生ける神との生きた交わり、死で終わりではない「永遠の命」でした。これを失ってしまっては、人間はその代わりに世界を手に入れたとしてもむなしいのです。

 

困難な状況に陥れられても信仰を守り抜いた渡部さんやダニエルのように、ぶれずに雄々しく行動できる時があれば、十字架の前夜、土壇場で主イエスを見捨てて逃げた弟子たちのように、心定まらない自分に絶望する時もあります。しかし大切なのは、立派であっても自らを誇らず、惨めであっても自らを裁かず、いつでも、どこでも主なる神に立ち返る信仰です。手立てのない困難に閉じ込められ、自分の命を失ってしまうように思える時も、罪によって断絶されていた私たちとの交わりを回復させるために主イエスさえも与えてくださった主なる神が私たちを見捨てられることはありません。私たちはすでに主なる神によって「永遠の命」に生かされているのですから、日毎に新しくこの主なる神に立ち返り、日毎に新しく、神の国を目指して主イエスの御跡を辿っていくのです。

 

 (2015年5月10日礼拝説教要旨)

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